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オリジナル : sa-ku-ra / 始まりの闇
Kanon : 3羽の折鶴 / 小さな温もり、思い出と笑顔と
1000文字小説投稿作品(外部サイトへ飛びます) : Sister DOG / 接点のない絆 / 深淵への哀惜

始まりの闇

「ねぇ、本当に大丈夫?」

 不意に響いた声。それに戸惑うことなく、俺は答えてみせた。

「分からないさ。分からないからこそ、歩いているんだ」

 闇の通路。そう表現するに相応しい空間を、ただ独り歩んでいた。いつからそこに立っていたのかは分からないけど、歩き出したのは、ついさっきのことだ。
 きっかけがあった訳じゃない。それがなかったからこそ、俺は自分で歩き出せたのかもしれない。
 そんな俺に、彼女はいきなり話しかけてきたのだった。

「わたしは…正直、怖いな」

 言葉と裏腹にその声は、どこか気の抜けたような口調だった。

「怖い…か。そうかもしれないな」

 俺もそんな彼女に合わせるように、笑いながら呟いた。

「…でも、歩かなきゃ始まらないんだ。立ち止まっている限り…この闇はきっと、広がり続けるだけだから」
「…どうして?」
「たぶん…元々この闇は、光だったんだと思うんだ」
「…だったら、どうして光は闇になっちゃったの?」
「…さぁ」

 はぐらかすように答えてみた。だけど俺には、その答えが分かっている。
 そして、俺次第で、この闇は再び光に戻るのだと言うことも。

「じゃあ、質問を変えるよ。どうして、闇と一緒に生きようとしないの?」

 相変わらず続く、言葉と噛み合わない口調。

「闇に飽きたからさ。光が恋しくなったんだ」
「でも、きっと道は険しいよ? 嫌になっちゃうかもしれないよ?」
「そのときは、また立ち止まるさ」
「でも…」

 少女の言葉が消えゆく。この目に映らず、この手に触れない姿。だけどそれはか弱く、滑稽に見えた。

「大丈夫だよ。俺は今、自分の意志でここにいるんだ。疲れたら休むし、嫌になったら…そのときは何とか考えるよ。無理をしないように」
「あ……」

 安心したのか、はっとしたような声が、闇から聞こえた。

「そうだね。今の君ならきっと、自分を見失わないでいられるはずだよね」
「言い切れないけど…おそらく」
「…うん」

 小さな返事。見えないけれど、きっと頷いてくれている。

「でも…」
「ん?」
「できれば今度は…長い距離を歩けるように頑張ってみて。無理なら無理でもいい。ただ、その目標は持ってて。それだけでもきっと、確かな力になると思うから」
「…ああ」

 見えるか分からないけど、強く頷く。

「じゃあ…行くよ」

 言葉とともに、俺は再び、闇の彼方へと歩き出す。彼女の返事を聞かぬまま。
 でも、返事を聞く必要はなかった。

 この地に光が戻ったとき、俺はその姿を見つけられるだろうから。


 当初は1000文字小説として掲載した作品ですが、スペースが文字数に組み込まれていないので、ツールを使うとちょいとオーバーしてしまっています。
 それはそうとして、この作品は抽象風景となっております。実際に暗闇の中で少年と少女が会話しているのではなく…って、ここまで言ってしまえば敢えて語る必要もないですね(汗)。
 短く物語をまとめることが苦手なので、この作品はそういった意味でもいい経験となりました。


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